2022年2月10日にファイザーの新型コロナ治療薬「パキロビッド」が特例承認されました。
以前、新型コロナウイルス治療薬の飲み薬、パキロビッドについて調べてみました。 | りんブログ (lynn-pharma.com)で紹介しましたが、添付文書情報で新たに分かった部分について紹介したいと思います。
パキロビッドパック
外観
パキロビッドの患者向医薬品ガイドにパキロビッドパックの外観がありました。
通常の1回量はニルマトレビルが300㎎（2錠）とリトナビルが100㎎（1錠）で、1日2回5日間服用します。腎臓に中等度の障害がある人はニルマトレビルの1回量が150㎎（1錠）になります。
効能効果・用法用量
パキロビッドパックの効能または効果は「SARE-Cov-2による感染症」です。
効能または効果に関する注意に、投与対象はSARS-Cov-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること、とあります。また、重症度の高いSARS-Cov-2による感染症患者に対する有効性は確立していない、とあり、基本的に重症化リスクのある軽症～中等症Ⅰが投与対象となります。
用法及び用量は次の通りです。
| 対象 | 成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児 |
| 腎機能正常の場合 | ニルマトレビル150㎎ 2錠、リトナビル100㎎ 1錠、1日2回、5日間投与 |
| 中等度の腎機能障害者 | ニルマトレビル150㎎ 1錠、リトナビル100㎎ 1錠、1日2回、5日間投与 |
用法及び用量に関する注意に、症状発現から速やかに投与開始すること、とあります。理由として、臨床試験において、症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない、とあります。
併用禁止薬
この薬の特徴として、併用禁止薬や併用注意薬がかなりたくさんある、ということです。
パキロビッドパックの構成成分であるリトナビルは、患者向け説明用紙に「リトナビルはニルマトレルビルの代謝を阻害することにより、ニルマトレルビルの血漿中濃度を増加させます。」とある通り、代謝阻害を目的として使用されています。
薬剤の代謝酵素に「CYP３A」というのがありますが、パキロビッドパックのニルマトレビルおよびリトナビルはCYP3Aによって代謝される薬剤で、同じCYP３Aによって分解される薬剤の血中濃度を上昇させるなど、他の薬剤との飲み合わせに注意が必要です。
添付文書にある併用禁止薬の記載について紹介します。
併用した場合、下記薬剤の血中濃度が大幅に上昇することが予測されるもの
不整脈、血液障害、血管攣縮等、これら薬剤による重篤な又は生命に危険を及ぼすような事象が
起こるおそれがあるので併用しないこと。
| 薬効分類 | 一般名 | 主な商品名 |
| 鎮痛薬 | アンピロキシカム ピロキシカム | フルカム バキソ、フェルデン |
| 片頭痛治療薬 | エレトリプタン臭化水素酸塩 ジヒロドエルゴタミンメシル酸塩 | レルパックス |
| 降圧薬 | アゼルニジピン オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン | カルブロック レザルタス配合錠 |
| 抗不整脈薬 | アミオダロン ベプリジル塩酸塩水和物 フレカイニド酢酸塩 プロパフェノン塩酸塩 キニジン硫酸塩水和物 | アンカロン ベプリコール タンボコール プロノン |
| 抗凝固薬 | リーバロキサバン | イグザレルト |
| 抗結核薬 | リファブチン | ミコブティン |
| 抗精神病薬 | プロナンセリン ルラシドン塩酸塩 ピモジド | ロナセン ラツーダ |
| 頭痛治療薬 | エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン | クリアミン |
| 子宮収縮薬 | エルゴメトリンマレイン酸塩 メチルエルゴメトリンマレイン酸塩 | パルタン |
| 肺高血圧症治療薬 | シルデナフィルクエン酸塩 タダラフィル | レバチオ アドシルカ |
| 勃起不全改善薬 | バルデナフィル塩酸塩水和物 | レビトラ |
| 高脂血症治療薬 | ロミタピドメシル塩酸塩 | ジャクスタピッド |
本剤と併用することで代謝を競合的に阻害されるもの
用量漸増期に本剤を使用した場合、腫瘍崩壊症候群の発現が増強されるおそれがある。
| 薬効分類 | 一般名 | 主な商品名 |
| 抗悪性腫瘍薬 | ベネクレクスタ | ベネトクラクス 〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病（小リンパ球性リンパ腫を含む）の用量漸増期〉 |
併用した場合、下記薬剤の血中濃度が大幅に上昇することが予測されるもの
本剤のチトクロムP450に対する競合的阻害作用により、過度の鎮静や呼吸抑制等が起こるおそれがあるので併用しないこと。
| 薬効分類 | 一般名 | 主な商品名 |
| 抗不安薬 | ジアゼパム | セルシン、ホリゾン |
| 催眠鎮静薬 抗不安薬 | クロラゼプ酸二カリウム エスタゾラム フルラゼパム塩酸塩 トリアゾラム | メンドン ユーロジン ダルメート ハルシオン |
| 麻酔薬 抗てんかん薬 | ミダゾラム | ドルミカム、ミダフレッサ |
下記薬剤の血中濃度が上昇し、クリアランスが低下する相互作用発現のおそれがあるもの
ケトコナゾールとの併用により下記薬剤の血中濃度が上昇し、クリアランスが低下したとの報告があり、本剤のチトクロムP450阻害作用およびトランスポーター阻害作用により同様の相互作用を発現する恐れがある。
| 薬効分類 | 一般名 | 主な商品名 |
| 肺高血圧症治療薬 | リオシグアト | アデムパス |
下記薬剤の血中濃度が低下したとの報告があるもの
本剤のチトクロムP450の誘導作用によるものと考えられている。
| 薬効分類 | 一般名 | 主な商品名 |
| 抗真菌薬 | ポリコナゾール | ブイフェンド |
本剤が下記薬剤の代謝を競合的に阻害し、また下記薬剤がCYP3Aを誘導するため血中濃度が上昇するおそれがあるもの
| 薬効分類 | 一般名 | 主な商品名 |
| 抗悪性腫瘍薬 | アパルタミド | アーリーダ |
| 抗てんかん薬 | カルバマゼピン | テグレトール |
CYP3A誘導作用により、ニルマトレビル及びリトナビルの濃度が低下するおそれがあるもの
本剤の抗ウイルス作用の消失や耐性出現のおそれがある。
| 薬効分類 | 一般名 | 主な商品名 |
| 抗てんかん薬 | フェノバルビタール フェニトイン ホスレニトインナトリウム水和物 | フェノバール ヒダントール、アレビアチン ホストイン |
| 抗結核薬 | リファンピシン | リファジン |
| 健康食品 | セイヨウオトギリソウ含有食品 |
と、併用禁忌薬でもこんなにあります。
他の新型コロナ治療薬と比較して使用しにくいのは間違いなさそうです。
ただ、パキロビッドパックの投与期間は5日間なので、その間の併用に注意する必要がありますが、ニルマトレビルとリトナビルの血中濃度半減期は6時間（±2時間）なので、服用後１、２日あれば影響は薄れるとおもいます。
まとめ
パキロビッドパックの効果として、COVID-19感染症による入院又は死亡のイベントがプラセボと比較して少ないのは臨床研究結果として示されています。
併用できない薬がたくさんありますが、うまく使用して、重症者が減ることを願います。
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