新形コロナウイルス感染症は緊急事態宣言がすべて解除されて1か月ほど経ちました。
新規感染者数は減少傾向が続いており、2021年10月31日の新規感染者は全国で229人と、8月ピーク時の約2万5千人と比較すると大幅に減少しており、このままの状態が維持できればと本当に思います。
10月28日に開催された第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、追加接種(3回目接種)について、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供することとありました。
過去にワクチン3回目接種について第25回予防接種・ワクチン分科会の資料をもとに記載しています。
ワクチン3回目接種について | りんブログ (lynn-pharma.com)
今回はワクチン分科会で示された追加接種(3回目接種)のデータ(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000849024.pdf)より、「追加接種による効果」についての情報があったのでご紹介します。
今回ご紹介するデータはいずれもファイザー社ワクチン(コミナティ®筋注)の情報です。
新型コロナワクチンの追加接種の効果(免疫原性)
デルタ株に対するファイザー社ワクチンの追加接種後1か月の中和抗体価は、2回目接種後1か月と比較し、若年者も高齢者も増加したと報告されています(Falsey AR, Frenck RW, Walsh EE, et al. SARS-CoV-2 Neutralization with BNT162b2 Vaccine Dose 3. N Engl J Med)。
研究内容は次の通りです。
- 18-55歳の11名と65-85歳の12名に対して、ファイザー社ワクチンの2回目接種後7.9-8.8ヶ月に同ワクチンの追加接種を実施
- 初回接種前、2回目接種後7日と1ヶ月、3回目接種前と接種後7日、1ヶ月に中和抗体価を測定したファイザー社フェーズⅠ試験
結果は次の通りです。
- 3回目接種後1ヶ月の野生株に対する中和抗体価は、2回目接種後1ヶ月と比較して以下の通り
- 18-55歳において5倍以上
- 65-85歳において7倍以上
- デルタ株に対する3回目接種後1ヶ月の中和抗体価は、野生株と比較して以下の通り
- 18-55歳において0.85倍
- 65-85歳において0.92倍
- 3回目接種後1ヶ月のデルタ株に対する中和抗体価は、2回目接種後1ヶ月と比較して以下の通り
- 18-55歳において5倍以上
- 65-85歳において12倍以上
緑色の棒グラフは新形コロナウイルスの従来株に対する中和抗体価で、青色の棒グラフはデルタ株に対する中和抗体価です。
人数は若年者11名、高齢者12名と少人数ですが、新形コロナウイルスに対する中和抗体価は、2回目接種後1か月(1Mo after Dose 2)に比べて3回目接種後1か月(1Mo after Dose3)では大きく増加しているのが分かります。
新型コロナワクチンの追加接種の効果(感染予防効果・重症化予防効果)①
60歳以上で、ファイザー社ワクチンを2回接種完了後5か月以降に追加接種した群は、非追加接種群と比較して感染例の発生率比が11.3分の1、重症例の発生率比が19.5分の1であったとの報告があります(Bar-On YM, Goldberg Y, Mandel M, et al. Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel. N Engl J Med. Published online September 15, 2021)。
研究内容は次の通りです。
イスラエル保健省のデータベースより、 2021年7月30日-8月31日の期間において、少なくとも5か月以上前にファイザー社ワクチンを2回接種完了した60歳以上のデータを9月2日に抽出。追加接種の有無による新型コロナウイルス感染例(PCR検査陽性例)と重症例(安静時呼吸数30回/分以上、酸素飽和度(室内気)<94%、またはP/F比<300)の発生率を比較した後ろ向きコホート研究。
結果(解析対象:1,137,804名)は次の通りです。
追加接種群(Booster Group)は非追加接種群(Nonbooster Group)と比べて感染症の発生率比(Confrmed infection Adjust Rate Ratio)が11.3分の1、重症例の発生率比(Sever illness Adjust Rate Ratio)が19.5分の1でした。
また、追加接種後12日目以降における感染例の発生率比は追加接種後4-6日と比べて5.4分の1でした。
追加接種を受けた場合、2回目接種後に追加接種を受けなかった人よりも感染症の発生や重症化が予防されるようです。
新形コロナワクチンの追加接種の効果(感染予防効果・重症化予防効果)②
ファイザー社ワクチンを2回接種完了後5か月以降に追加接種した群では、全年齢で非追加接種群より感染例の発生率比が低かった。また、40歳以上において非追加接種群より重症例の発生率比が低かったとの報告があります。こちらは前述の①の追加報告です(Bar-On YM, Goldberg Y, Mandel M, et al. Protection Across Age Groups of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19. medRxiv.)。
研究内容は次の通りです。
イスラエル保健省のデータベースより、 2021年7月30日-10月6日の期間において、少なくとも5か月以上前にファイザー社ワクチンを2回接種完了した16歳以上のデータを10月6日に抽出。追加接種の有無による 新型コロナウイルス感染例(PCR検査陽性例)と重症例(安静時呼吸数30回/分以上、酸素飽和度(室内気)<94%、またはP/F比<300) の発生率を比較した後ろ向きコホート研究。解析対象は4,621,836名です。
結果は次の通りです。
年齢 | 感染症の発生率比 |
16-29歳 | 17.6分の1 |
30-39歳 | 8.8分の1 |
40-49歳 | 9.7分の1 |
50-59歳 | 12.2分の1 |
60歳以上 | 12.4分の1 |
年齢 | 重症例の発生率比 |
49-59歳 | 22分の1 |
60歳以上 | 18.7分の1 |
年齢 | 死亡者の発生率比 |
60歳以上 | 14.7分の1 |
追加接種(3回目接種)を受けることで、追加接種を受けていない場合より新型コロナウイルス感染症の発症が抑えられる可能性がありそうです。
まとめ
海外では追加接種の対象者を高齢者や特定の疾患がある人としている場合や12歳以上全員としている場合があります。
また、追加接種時の副反応は交互接種を伴う追加接種(追加接種は1回目、2回目接種のワクチンと別のワクチン)の副反応は、初回シリーズで報告された副反応と同程度であり、また、交互接種を伴う追加接種と、交互接種を伴わない追加接種(3回目接種も同じワクチン)の間で、副反応は同様であったと報告があるようです。
追加接種の情報が増えてきたらまた紹介したいと思います。
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