モデルナワクチンの副作用調査データ、日本人1万2000人の中間報告を紹介します。

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以前、ファイザーワクチンの日本人2万人接種データ紹介! | りんブログ (lynn-pharma.com)にて、「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」のファイザー社製ワクチンの調査での副反応についてご紹介しました。当時、医療従事者を対象とした調査で先行接種の約2万人を対象に副反応などを調べており、現在最終報告待ちの状態です。

モデルナ社のワクチンについても同様の調査が実施されており、対象は自衛隊員の方々です。現在1万2000人の方に接種されており、順次情報が集まっています。

今回、厚生労働省の「第66回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」にて8月4日時点のコホート調査の健康観察日誌の中間報告(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000816287.pdf)が発表されていたので、内容を紹介します。

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コホート調査 概要

コホート調査の目的は、治験と同様の方法で、1~2万人の安全性情報を収集し、厚労省の専門家会議を通じて国民に本ワクチンの安全性情報を発信することです。

本調査は、ワクチン接種者を対象とする前向き観察研究です。前向き観察研究の場合は、通常の調査と異なり、接種される人の基礎疾患や服用している薬剤などを把握でき、ワクチン接種後の副反応情報を漏れなく入手することができます。

調査内容はモデルナ社ワクチン接種者の最終接種4週後までの安全性で、1万人という大規模な調査により、通常補足が難しい、0.03%発現する副反応疑いが95%の可能性で補足できます。

調査される情報は以下の通りです。

  • 体温、接種部位反応、全身反応(日誌から収集)
  • 副反応疑い、重篤な有害事象のコホート調査による頻度調査

モデルナ社ワクチンのコホート調査では、1万名程度の接種者の調査を予定しています。

モデルナ社ワクチンの接種者情報(コホート調査参加者)

モデルナ社ワクチンのコホート調査の対象者は8月2日時点で12,855人で、1回目接種の日誌回収は7,615人、2回目接種の日誌回収は2,491人です。人口統計学的特性は次の通りです。

治療中の疾患として、高血圧症が4.7%、脂質異常症が2.8%、糖尿病が1.0%、気管支喘息が0.8%、アトピー性皮膚炎が1.3%、その他が5.4%で、治療中疾患なしが全体の86.5%でした。

既往歴として気管支喘息は4.3%、悪性腫瘍は0.4%、COVID-19が0.3%、いずれもなしが95%でした。

自衛隊員が被接種者の大半を占めていることから、男女比は男性が95%であり、ファイザーの時の医療従事者の調査(男性34%,女性66%)のときと大きく分布が異なります。また、20代、30代、40代で全体の85%を占めており、全体的に若い方の接種データとなるようです。

副反応:発熱(37.5℃以上)

1回目接種後は7,615例のうち、接種翌日に5%、通期で約8%の人で37.5℃以上の発熱がありました。

2回目接種後は2,491例のうち、接種日当日は約12%、接種翌日(day2)に約78%、day3に20%、に37.5℃以上の発熱があり、通期で約80%の人に発熱がありました。38℃以上の発熱は接種当日に約9%、接種翌日に約60%、通期で約72%でした。

ファイザー社ワクチンの調査の際、2回目接種後の発熱は約38%であり、発熱している人の割合はモデルナ社ワクチン(約80%)の方が明らかに多いです。また、38℃以上の発熱が約72%の方に出ているので、ほぼ38℃以上の発熱が副反応として出現するようです。

なお、付文書では、発熱の割合が15.5%とありましたが、調査では約80%の方に発熱がみられ、明らかに添付文書の割合より高いようです。

副反応:全身反応

接種後の全身反応の割合は次の通りです。(グラフより目視のため大まかな割合)

なお、添付文書には、疲労(70.7%)、頭痛(66.5%)とあります。

人数倦怠感頭痛鼻水
1回目接種後7,615例接種日 10%
day2 20%
day3 15%
day4 5%
接種日 8%
day2 12%
day3 10%
day4 5%
接種日 2%
day2 4%
day3 3%
2回目接種後2,491例接種日 32%
day2 82%
day3 45%

day4 15%
day5 5%
接種日 22%
day2 65%
day3 40%

day4 15%
day5 6%
接種日 5%
day2 10%
day3 4%
day4 2%
全身反応

参考までにファイザー社ワクチン調査の際のデータがこちらです。(4/28時点)

接種日Day2Day3Day4Day5Day6Day7Day8
接種1回目頭痛(%)812754322
倦怠感(%)1116743221
鼻水(%)56543333
接種2回目頭痛(%)164827138532
倦怠感(%)226635157432
鼻水(%)511754322
ファイザー社ワクチン調査時の全身反応(4/28時点)

ファイザー社のワクチンの際のデータと比較すると、倦怠感、頭痛については明らかに副反応の発現率が高くなっています。

倦怠感の発現率(82%)は添付文書の発現率(70.7%)より高いようです。

副反応:接種部位反応(発赤、腫脹、硬結)

接種後の接種部位反応(発赤、腫脹、硬結)の割合は次の通りです。(グラフより目視のため大まかな割合)

なお、添付文書には、発赤・紅斑(12.3%)、腫脹・硬結(16.6%)とあります。

接種日Day2Day3Day4Day5Day6Day7Day8
接種1回目発赤(%)46651112
腫脹(%)59742111
硬結(%)46532111
接種2回目発赤(%)81822169532
腫脹(%)9171694211
硬結(%)51085210.50.5
モデルナ社ワクチン調査 接種部位反応

参考にファイザー社ワクチン調査データを掲載します。(4/28時点)

接種日Day2Day3Day4Day5Day6Day7Day8
接種1回目発赤(%)4.811.810.46.43.51.81.21
腫脹(%)5.011.88.84.52.21.00.80.8
硬結(%)4.29.87.64.12.11.20.80.8
接種2回目発赤(%)4.01213.29.85.82.51.30.8
腫脹(%)5.012.210.56.83.61.60.80.5
硬結(%)3.48.87.85.23.21.80.90.5
ファイザー社ワクチン調査 接種部位反応(4/28時点)

接種1回目の発赤については、ファイザー社ワクチンの方が発現率が高いようですが、接種2回目の発赤、腫脹についてはモデルナ社ワクチンの方が発現率が高いようです。

発赤の発現率(22%)は添付文書の発現率(12.3%)より高いようです。

副反応:接種部位反応(疼痛、熱感、かゆみ)

接種後の接種部位反応(疼痛、熱感、かゆみ)の割合は次の通りです。(グラフより目視のため大まかな割合)

なお、添付文書には、疼痛(92.7%)とあります。

接種日Day2Day3Day4Day5Day6Day7Day8
接種1回目疼痛(%)648567288322
熱感(%)59532112
かゆみ(%)22222112
接種2回目疼痛(%)7085703515521
熱感(%)15301883211
かゆみ(%)35687532
モデルナ社ワクチン調査 接種部位反応
接種日Day2Day3Day4Day5Day6Day7Day8
接種1回目疼痛(%)659055195322
熱感(%)6.810.14.81.60.80.40.20.2
かゆみ(%)1.82.64.14.12.61.20.80.8
接種2回目疼痛(%)6888623214521
熱感(%)7.815.98.64.21.80.821
かゆみ(%)1.84.46.87.25.42.61.20.8
ファイザー社ワクチン調査 接種部位反応(4/28時点 )

モデルナ社ワクチンもファイザー社ワクチンと同様に、接種1回目から疼痛は発現するようです。接種2回目の熱感については、モデルナ社ワクチンの方が発現率が高いように思います。かゆみについてはあまり差がありません。

年齢別の有害事象の頻度

年齢別の有害事象の発現頻度は次の通りです。

20歳代30歳代40歳代50歳以上全体
発熱(1回目接種)%128648
発熱(2回目接種)%8380806979
疼痛(1回目接種)%8284898887
疼痛(2回目接種)%8386909088
全身倦怠感(1回目接種)%3128282027
全身倦怠感(2回目接種)%8486828183
頭痛(1回目接種)%2418171418
頭痛(2回目接種)%7670656069

年齢別の有害事象の頻度はあまり大きな差はみられませんでした。発熱、頭痛については若年層の方がやや出やすいようです。

接種後副反応:病休

2回目接種後の病休者の推移として、接種当日が1%未満、接種翌日(day2)が約35%、day3が約14%、day4が約3%でした。

2日目接種後病休日数と人数は次の通りです。

病休日数人数割合
64228.02%
223610.30%
3231.00%
420.09%
510.04%

調査情報 まとめ

調査情報のまとめとして次の記載があります。(報告書より転記)

  • 1回目接種後の副反応はコミナティ筋注とほぼ同様の傾向であった。2回目接種翌日に78%の被接種者が37.5℃以上(61%の被接種者が38℃以上)発熱した。接種2日後(Day3)にも20%の被接種者に発熱が認められたが、接種3日後(Day4)にはほぼ解熱した。
  • 年齢、性別による有害事象の傾向は多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)で検討したところ、1回目接種後、2回目接種後ともに多くの有害事象で女性の頻度が高かった。疼痛は、年齢があがるにつれて頻度が高くなる傾向がみられた。それ以外の有害事象は、年齢が高くなるにつれて頻度が低下したが、コミナティ筋注に比べて、低下傾向が少なかった。
  • 発熱等のため、39%が病休を必要とした。
  • 1回目接種7日目ごろから発赤、かゆみを伴う遅延性皮膚反応(通称:モデルナアーム)が、2%程度発現した。
  • COVID-19の既往があると、1回目接種時に発熱、全身倦怠感が認められた。

まとめ

知人の接種状況と比較すると、女性の頻度が高いこと、発熱の頻度が高いこと、接種部位に疼痛があることは、データと一致していると思います。今回の調査対象の多くは自衛隊員であり、比較的体力がある方々ですが、病休となった方が39%があることから、これから接種される方は2回目接種後は仕事を休む可能性があると認識したほうがよさそうです。

ファイザー社ワクチン、モデルナ社ワクチンはどちらもmRNAワクチンですが、副反応の出方はやや異なるようです。ワクチンについては選べないことが多いですが、自分の接種するワクチンに出やすい副反応を認識することで、接種後の対応(仕事を休むなど)を検討するとよいと思います。

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